第7号
- かもとりごんべえ社
- 2024年10月29日
- 読了時間: 4分
更新日:1月25日
雨の朝 三嶋 善之
アメリカの中都市の食堂で
カウボーイの友人と飯を食って
アメリカは何回目だい
3年ごとにきているからな
数えきれない
友人は
チップを日本円で払うと喜ぶよと
教えてくれた
息子の結婚式の日のようだった
息子は伝書鳩を飛ばし
馬車に乗って消えて行った
洗面所はどこですか
ここにはないが
そのかわり
こういう場合があると
机の下からいろんなものを出してきて
教育的な場合
倫理的な場合
会計的な場合
救命的な場合
宗教的な場合
文学的な場合
自然的な場合
社会的な場合
工学的な場
科学的な
幾何学
修辞
地
あとは小さくて意味不明だった
災害と地震
異邦人
移民と不法滞在
戦争
選挙
海洋投棄
サボテンの食べ方
さそりとアルマジロ
チャランゴの作り方
チキンとキャトルビーフ
ビーフ・キャトルだったか
ランド・アンド・アグリカルチュラル
バケツに筒が立ててある
藁や金属や布紙がくるんであった
狂言と京都 おいでやす
お前のために日本文字で書いてあるんだ
こういう国なんだよ
だからアメリカが好きなのさ
この中に何が入っているのか
わからない
らくしこてーじ
それは落柿舎のことか
目が開いた
あたりをみると
日曜の朝だ
楽しめるものだ
次回はロングアイランドの広大なゴルフクラブで
混乱した夢を見るつもりだ
追悼谷川俊太郎 西畠 良平
「あなたはタニカワで、私はタニガワ」と
雁さんは書いた
そして
「清濁の差はおたがいの土着性の濃度に見あっていましょう」と大別した
そうしてタニガワさんは
貧しい農民や労働者の側に立ち
「東京へ行くな」と叫び
「二十世紀の母たちへ」と決起を呼びかけた
一方のタニカワさんは
「外界に対して間をとろうとするときの田舎者の苦労はいらない」と断じられた
「事物はつねに他人であるとともにあなたの友人です」と
敵を消去しながら
ただそこにある風景や
風の流れるさまから
さまざまな言葉で
さまざまな筆法で
社会を見つめ
暮らしを見つめ
畢竟人そのものに帰り着いて
言葉を「填詞」として
リズムとハーモニーにのせていった
そしてタニガワさんさえも
その「ことばあそび」の楽しさに
誘いを断りきれなかった
わたくしはといえば
そんな鋭い者ではありません
そんな優れた者でもありません
しかしながら
そんなタニカワさんにも
そんなタニガワさんにも
憧れる一人でありました
タニカワさんの十四行という短い行間に詰められた言葉に
魅せられ
魅せられ
その二十億光年の宇宙に入り込んでしまった
その一方で
タニガワさんの
大衆運動へのアジテートにもこたえたかった
タニカワさんはツルリと抜け出して
鳥羽の〈旅〉から
落首へと抜け出して
サカシマや放射状に言葉を編んだりした
そうして行き着いたのは
タニガワさんも吸い込まれた
〈ことばあそびうた〉だったが
私にはわらべうたのサーキットが
あるいはわらべそのものの回路が
備わっておらず
ながいことくるしんだ
それでも「どこからか言葉が」聞こえてきて
日々を重ね
月々を重ねて
〈老い〉も読み取れるようになった
それが突然途絶えた
とても残念なことだったが
人が行きつくところは
みな諸行無常
タニガワもタニカワも鬼籍の人となり
寂しさはつのり
空しさは果てもない
その一方で
言葉への期待は膨らむばかり
言葉の力を信じたい
いつか言葉の翼で翔びたちたい
隠れられました
土師 尽
隠れられました
壱の神申すに そなたの庭の花は これからも咲き続けると
壱の神は隠れられた
弐の神 家族も いやさかに 心配はいらぬ
弐の神も姿を消した
参の神申すに
ウクライナは安寧があるだろう
地球温暖化はむずかしいが、この私も一生懸命努力をしよう
民主主義はこれは人々によって守られていくだろう
自由は
明治に取り決められた不自然な決まりごとはいいかげん葬られる
人々の所作は美しくなれ
利己と利他は一体であれ
やがて光が来る
小さなストーンヘンジのような光沢は右から拡大し
ファルコン号のような光束が 左から接近する
閃輝暗点としても
四の神の降臨と 私は肯んじる
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