第2号
- かもとりごんべえ社
- 2023年7月15日
- 読了時間: 2分
更新日:2024年1月22日
どどんどどんと 西畠良平
グラウンド (卒業に寄せて) 土師 尽
正月の理由 三嶋善之
どどんどどんと 西畠良平
はじめに大地と水が在り
水が集まり 滔々と流れる川のほとりに
人とひとが出会って江を形づくる
やがて暮らすための家や商いのための店を
それこそどんどん どどんどどんと増やす
屋は屋を重ね 大海に注ぐところでは湊
さらに舟と舟 船と船が行き来すると港
暮らしの営みもどんどん どどんどどんと
邑は村となり まちは町となってさらに街に
そういう中では
街街を繋ぐ行き来の道も
遥か地平線の向こうまで延びていって
人の営みも徒から走へ
車から列車へとへと 速さを増していく
遠方の地へ早く繋がるのが発展とされる
一乗山の下から
九頭竜川の小さな支流が流れていただけの
谷間の邑に 難攻不落の城を築き
その回りには 商いの民も多く引き入れ
都にも紛う寺社や庭園を配して
碁盤の目のような大路を築いて
越前に花咲いた大名朝倉氏の都が出来たのは
夢うつつの昔
しかし下克上、弱肉強食の戦国の倣いとて
「第六天魔王」の業火に焼かれ
城はもとより屋敷や邸宅
取り巻く商家、家屋、寺社仏閣まで
灰燼に帰した
そして三百年ほども都市は田畑の下に埋まり
街は「何もない所」とそやされ
「発展」は留まったのだ
それなのに埋まっていた都市の発掘が
忘れていた発展を思い出させたのか しかし
滅び去った豪勢な館のまがい物を造り
かつての栄華を思い堕させたくも
とても叶わない
遠い街と結ぶ新しい路線ができても
ここはやはり「何もない所」
ここから未来に向かっての発展はない
もう新しくは何も生まれないのだ
グラウンド (卒業に寄せて)
土師 尽
ころがっていったボールと
追いかけていった友だち
解きはなたれた色とりどりの風船が
青空に溶けていく
おしゃべりや歓声は
もうここにはない
校庭の白線は
走り出した僕たちの滑走路
「ずっと遠くへお行きなさい」
「自由な空へはばたきなさい」と
校庭のあしあとが
空もようを気にしている
「いつかはここにもどっておいで」
「いつでもここへもどりなさい」と
正月の理由
三嶋善之
大みそかに
コガネムシの幼虫を退治する
いつも来るヒヨドリが
今年はこない
もっと素敵なレストランを見つけたのだろう
それならそれでいいさ
篆刻は失敗した
年賀状は出した
明日は元旦なのだ
昔のじいさまみたいに
腰をかがめて鏡餅を飾る
じじいになった
細い雨が降っている
細い雨だ
雨は海に流れていくだろう
明日は
初日の出を拝んでから
赤ワインを飲む
ヒヨドリが来ない理由
地震
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